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未来の横綱

「ほら、あれが稀勢の里。未来の横綱やで」
サークルの用事で、偶然にも両国国技館の前にいたぼくは、国技館から付き人と出てくる浴衣姿の青年をじっと見ながら、後輩にそう言ったことを今でも覚えている。正確には、彼が大関になった頃から、事ある度に脳裏に蘇っていた。この日がいつだったのか、今、はっきりと特定できた。2005(平成17)年5月8日、日曜日。サークルが文芸サークルで、年2回同人誌を発行していたおかげである。ありがとう、駒場文学63号。これを見ている人で、いま手元にこの本がある人はいないだろうけど、38ページに「五月場所の初日」と書いてある。

ありがたいことに、データベースを検索すれば、この日の彼のことはある程度わかる。
http://sumodb.sumogames.de/Rikishi_basho.aspx?r=1235&b=200505&l=j
まだ旧四股名「萩原」から「稀勢の里」に変わって4場所目、18歳で新入幕して、7月生まれの彼にとっては18歳最後の場所。初日は安美錦に上手投げで敗れている。この場所は西前頭11枚目、5勝10敗で負け越している。

当時、ぼくは駒場で一年留年して文学部のインド哲学仏教学研究室に進学したばかりで、「GW明けには字が読めるように」と必修・サンスクリット語のT先生に言われていたことを思い出した。でも、Devanagariよりは江戸文字を読んでいたらしい。

あれから12年。自分の発言が嘘にならなかったことを、しみじみと喜んでいます。これから全盛期を築く"大"横綱となり、あの発言がまた嘘になることを、ひっそりと期待しています。